死亡届の決まりを知った初めての家族葬

法人設立1年目は3軒、2年目は6軒と依頼件数も少なく、施行は全て業者依頼、我々は邪魔にならない程度に手伝いながら葬式の流れや使用品を学ぶ期間でしたが、3年目に入ると、月1回ペースの依頼まで増える倍々ゲームは7年間続きました、2年目ようやく自分達だけで自宅安置の直葬をした事で、5万円火葬支援パックが利益は無いけど可能と分り、葬具や霊柩車を自社所有する覚悟をした直後、知り合いから電話で隣接高崎市で女性が亡くなったが、詳しい話しは、ある喫茶店のマスターに聞いて欲しいと言われます。

喫茶店に行くと話しは通じており、マスターの説明によると、高崎のビルに住んで管理してるけど、夫婦じゃないし、2人とも都内の人だから、自分が死亡届の申請者になると言われ、搬送専門業者さんに連絡し指定病院搬送口で待ち合わせです。ただ、すぐに行けないから認印を渡すので、死亡届は同居の男性と相談して記入て欲しいと言われました。

総合病院に到着、搬送業者も到着しており、軽く挨拶すると業者に案内され霊安室に入りますが、布団を掛けた遺体はあるけど家族の姿が見えず看護師さんに確認すると、突然亡くなったので警察の検視が入り、同居の男性は事情を聞かれているらしく、もう少し時間が掛かりそうだと言う。

先日、初めて自分達だけで直葬したばかり、今回は警察が入る死亡――、流れの知識は全くありませんから、同居の男性が戻るまで搬送業者の人に色々聞かせて貰いました。1時間程するとキャップを被った初老の男性が疲れ果てた顔で戻ってきました。突然、心筋梗塞で倒れ亡くなったそうで、捜査一課は殺人を疑いますから、取り調べのような時間だったのでしょう。

ご遺体と男性は寝台車に乗り、我々はあとに続いて街中にある8階建てビルに到着、7階に住んでると言うのですが、エレベーターは狭くストレッチャーは入りません。そこで搬送シートの取っ手を搬送業者と両側で持ち、椅子に座ったような形で運び、奥の部屋に敷いてある布団に寝かせ、ドライアイス処置をすると打合せです。

打合せは最初からしてきたので問題ありません。聞くと10人位だから出来れば自宅で葬式したいとの事、でも故人を納棺した棺はエレベーターに乗らないと伝えると、その点は広い非常階段があり、人手も用意する事で自宅での家族葬に決まりました。すぐに死亡診断書を記入して貰いましたが、届出人のマスターは前橋市民で、お2人とも都内人なら火葬は無料の前橋市に決定です。火葬予約確認をすると翌日の午後3時火葬がとれました。

『斎場(火葬場)の料金設定について』
火葬料金は大枠として以下の分類になります(群馬県を例にしてあります)

① 市区町村民、及び指定地域住民は無料、他は有料
  例・高崎市民は無料、市民外は55,000円
   ・市民火葬のみ無料、市民外は一律55,000円の火葬料が必要な斎場
  ・② ③以外は全て、この設定です
 
② 指定地域住民は低料金、他は高料金
  例・沼田広域住民は11,000円、他は33,000円
   ・市民と管轄地域住民火葬は11,000円、それ以外は33,000円の火葬料が必要な斎場
 
③ 指定地域住民及び指定地域住民が申請者であれば無料、他は有料
 例・故人及び申請者が前橋市民は無料、他は63,000円
  ・市民及び申請者が前橋市民なら全国誰でも無料で火葬、他は63,000円の火葬料
  ・群馬県の場合、他に渋川市、伊勢崎市が同様の設定です

『死亡届出人(申請者)になれる人達』
全国共通、以下の人達限定、役所により24時間受付もありますが、火葬許可証の発行は営業時間内も多く、基本的には行政の営業時間の申請が無難です

親族(血族6親等、姻族3親等以内)
同居者(住民票記載住所が同じ住所の者)
家屋管理人(医院長、施設長なども家屋管理人として申請者になれます)
家主,地主,土地管理人等,後見人,保佐人,補助人,任意後見人,任意後見受任者です

また死亡届を提出できるのは『死亡地役所』『故人本籍地役所』『届出人居住地役所』のみですが、火葬する火葬場、斎場は各々の費用さえ払えば全国何処でも構いません。

余談ですが、時々皇居を始め、居住に関係なく憧れの場所、2人のゆかりの地などを本籍地にしてある方もいますが、戸籍謄本は現住所役所で取得できず、本籍地で取得となるので、居住地以外の本籍は不便ですから健康なうちに対処しておかれたほうが無難です。

死亡届書が完成したのは午後5時近く――、すぐ前橋市役所に電話すると、火葬予約はとれているので明日の朝一番に来て貰えれば良いと言われます。一度、前橋の事務所に戻り、自宅葬で使用する葬具を全て自家用車に積み込みビルに戻った頃には、7月とはいえ暗くなり始めていました。

狭いエレベーターに葬具を目一杯積み込んで7階で降ろし、部屋に運んで葬式ができる準備です。新品の白幕を部屋の四方に張り、新品の屏風2枚を広げ、その前に三段の後飾り祭壇を設置、両サイドに生花と、回転灯篭、祭壇にはキラキラ回転灯、枕団子が乗った白木膳を飾り終えた頃には、故人の兄弟姉妹や子供達も集まり我々の仕事を見ていたようです。

部屋も完成し死化粧をしようと顔の当て布を外すと、倒れた時に打ったのでしょう。顔にアザが出来ていたので千明にコンシーラを買ってくるよう指示し、ご遺体の顔を綺麗に拭きます。初老ですが小綺麗にしている女性で手足にマニキュア、ペディキュアをされ、おしゃれな方のようです。

ご遺体の顔に乗せるファンデーションや口紅の色を作りながら故人に話しかけます。
「突然倒れて、自分が亡くなった事さえ分からないかもしれないけど、家族親族も来てくれたようですから、綺麗になってみんなと逢おうね。僕も頑張るからね」

コンシーラでアザを抑え、化粧をし終えると結構美人さんです。ムースで整髪し、再度ドライアイス処置を済ませ布団を掛けると集まった人達を呼び、お顔を見て頂き、末期の水をとり、線香を供え終えると、我々の自己紹介と明日の葬式の説明を行います。

「故人は都民だそうですから、高崎市民では無いので火葬料32,500円掛かりますが、親戚の方が前橋市民で、前橋は親族が申請者なら、何処の人でも無料で火葬して貰えますから、少し遠くて大変ですが、自宅葬をした後、前橋斎場に移動して火葬となります」更に続けて――、
「明日は午前11時から湯かん納棺の儀、昼食を挟んで午後1時から僧侶による葬式、午後2時出棺、午後3時火葬、4時30分過ぎの拾骨、自宅に戻るのは午後6時頃になると思います。明日は1日掛りで大変ですが、宜しくお願いします」

午後10時過ぎ、初めて尽くしでグッタリ疲れ、足はパンパンでしたが、事務所に戻り、明日の動きを再確認して午後11時過ぎには家路に着きます。

翌朝午前8時30分、前橋市役所窓口に死亡届を提出すると、しっかり待たされてから呼ばれます。
「どんなに調べても申請者と故人が繋がらないのですが――、」
「えっ? 申請者は親戚の方ですよね?」
「そう思って戸籍を辿っても全く繋がりません。この方では申請者に成れず火葬許可が出ません」

担当者の言葉に後ろからハンマーで殴られたような衝撃を受けます。昨日印鑑を借りたマスターを親戚だと思い込んで、再確認して無かった単純ですが致命的なミスです。頭の中でどうやって乗り切るか瞬時に色々考え、集まった親族の誰か申請者になって貰い、前橋斎場の市民外火葬60,000円は、うちで払うしかないだろうと腹を括った時、窓口の担当者が言います。

「でも、この方は都民でなく高崎市民ですよ」
「えっ!? 本当ですか?」
「はい、間違いありません」

すぐに高崎斎場に電話で火葬炉の空き状況を確認させると、午後3時火葬の予約がとれたと聞き、すぐに電話で親族の誰かに申請者になって貰うからと必要事項を聞きながらの移動、一旦ビルに寄り三文判を借り高崎市役所に届け、火葬許可証を受け取ると、予定より遅れてビルに戻ります。

我々は汗びっしょりで動き回りましたが、家族親族は火葬場が近くなった程度の感覚で、湯かん納棺、仏式葬式、綿衣裳と進み、火葬場まで10分ですから何事も無かったかのように葬式は進みました。火葬に入るとようやく「ホッ・・・」この流れはラッキーとしか言いようがありません。

骨壺を抱え自宅に戻ると後飾り祭壇に安置、全員が線香を供えると部屋を元に戻す作業に入る。全てを片づけると、明日の散骨の流れを喪主と再確認しようと居間に向かおうとした時、それまで何も言わず遠巻きに見ていた親族の人達が我々を囲むように近づいてきました。

「途中手違いもあったようですが、昨日からずっと見て、どんな時も心のこもった対応で、お金では買えない、温かみのあるお葬式をしてくださって本当にありがとうございます。私たちは神奈川に住んでますが、あんしんサポートさんの支店は無いのですか? あるなら我々の時も是非お願いしたいと思って――、」

あまりに突然で予想外の誉め言葉、僕も千明も泣きそうです。帰りの車中、今まで経験が無いほどの疲れと、味わった事の無い充実感でした。当日の火葬場移動など、あり得ないし、それが可能だったのはラッキーでしかありません。

いつもの事ながら土壇場で何とかなる――、弱者支援を大前提に行っている葬儀支援、きっと目に見えないチカラが助けてくれたんだと、分かったような、分からんような事を2人で言いながら、初めての家族葬、初めての納棺師、そして死亡届人に成れる人、届出できる役所を知りました。こうして改めて振り返ると、僕の知識は読んだり、聞いて得たものでなく実体験で学んだ事が殆どです。今回のように冷や汗もの――、って事もありますが、だからこそ身につくのでしょう。

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