お婆ちゃんが支払うと聞き、家族葬から直葬に変更

お爺ちゃんの事で事前入会してたお婆ちゃんの孫から、お爺ちゃんが亡くなったと連絡があり、指定先の病院に行くと10名ほどの人が病室にいました。我々の到着が分り挨拶に来てくれたお婆ちゃんは、事前相談の時と違い、鼻に酸素チューブをしているではありませんか、簡単に挨拶すると、お爺ちゃんを乗せあんしん館に戻りますが、葬式内容が分らず、家族が到着するまでストレッチャーに乗せたままでした。

家族が到着、一旦待合所で打合せです。集まってるのはお婆ちゃんの子供でなく孫達のようですが
「お婆ちゃん、家族葬で良いよ」
「うん198,000円の家族葬で良いと思うよ」
全員が家族葬と言いましたが、言い方が自分達で支払う雰囲気では無かったので聞きます。
「ところで、支払いは誰がするの?」
全員を見回しますが、自分が――、という人はいません。
「もしかして、お婆ちゃんが払うの?」
するとお婆ちゃんが、
「はい、私がローンで支払うつもりです」

事前相談資料を見ると、夫婦とも国民年金だけで生活し、エレベーターの無い市営住宅5階に住んでると書いてあります。階段の昇り降りは孫達のような若者なら問題ありませんが、82才で酸素吸入をしてるお婆ちゃんが大変なのは明らかですが、この収入では引っ越しも難しいでしょう。

爺ちゃんが亡くなっても国民年金に遺族年金はありません。これからは、婆ちゃんの年金だけで生活すると考えておかねばなりません。葬式が済んだら民生委員に言って生活保護の差額支給の申請を駄目元でもするようにと伝えようと考えたくらいですから、ローンなどもっての外です。

「お婆ちゃんがローンで払う? この中で自分が払うって人はいる?」
誰も頷くことはありません。そこで言います。
「お婆ちゃんが払うなら、家族葬なんてしなくていい、5万円火葬支援パックで決まり、他の葬式を希望するなら、お婆ちゃんの生活が守れない葬式なんてうちは受けない」
当然、誰も何も言えません。
「ところで、婆ちゃん墓はあるの?」
「はい、〇〇寺にあるので、お爺ちゃんがもしもの時は分割で良いって言ってくれました」
・・・・・ほんの少し考えて伝えます。
「婆ちゃんさぁ、寺には言わなくて良いから、納骨したいと思う近くになったら寺に行って、あんしんサポートに言われたって今日の事を言えば良いよ。何か言われたら僕に電話ちょうだい」

「婆ちゃん良く聞いてね、爺ちゃんの葬式をしてやりたい気持ちは分るけど、婆ちゃんの生活だってあるんだよ。満足な年金も無いのにローン組んだら、生活できないし医者に行けば費用は掛かるんだからさ、そんな婆ちゃん見てたら、爺ちゃんも安心して成仏できないだろ」

当時は5万円で消費税込でしたから、火葬だけして、待合室も借りず、食事もせずなら、爺ちゃんの葬祭費だけで賄える。一銭も要らないお葬式には成りますが、入院費と死後処理と死亡診断書の支払いは残ってますから、火葬は5万円でも諸費用で倍額程度にはなるはずです。

この話しをして何か言う寺なら、僕が受けて立つつもりでした。国民年金だけで生活する老人にローンを組ませるつもりは無いし、そんな人にも分割で支払いさせる寺なら、この先付き合う価値など無い、寺と喧嘩しても檀家を辞めさせるつもりでした。

「みんなは孫だよな、ならさ、今まで色々世話になった爺ちゃんと婆ちゃんなんだから、病院の支払いだけでも出し合ってあげたらどうかな――、」

これ以上の強要はできませんから、どうなるか分りませんが、集まってくる近しい存在の孫でさえ、婆ちゃんの生活の心配はしてくれないし、費用は出してくれない――、これが現実です。爺ちゃんが逝って2年後、婆ちゃんも終幕を迎え、爺ちゃんと同じパックを使いました。

このケースを始め、僕らがいれば無理はさせませんが、葬儀屋と寺は孫達の意見を押して家族葬をするはずです。この婆ちゃんがローンを組み、寺は分割で良いと言ってますが安くしてくれるとは言ってませんから。50万円なら毎月1万円で4年以上払い、20万円のローン3年払いで年間8万円ほどになるでしょうけど、お婆ちゃんの年金は最大で月額6万円ほどですから、その中から2万円返済――、誰がどう考えたって生活出来ない。こんな計算、葬儀屋と寺にもきるはずです。

「婆ちゃん、この2年間は死後費用の心配や、生活費は大丈夫だったかい、安心して生きられたかい、もう金の心配はしなくて良いよ。久しぶりで爺ちゃんと逢ったら、温泉にでも行って、2年間の土産話しをしたり、手を繋いて散歩でもして過ごすと良いよ」
孫や親族が帰ったあとの式場で、お婆ちゃんの亡骸に語った言葉でした。

葬儀屋も寺も商売ですから儲けるなとは言いませんが、少額年金だけで暮らす、余命わずかな老人まで儲けの対象にしなくても――、と思うのです。少額年金だけで暮らす老人の中には、自営や農家など国の制度で厚生年金に加入出来なかった人達も沢山いるわけで、個人の問題では済まされない現実もあるのです。医療、施設、葬式事業は人の生死に関り他の商売とは一線を隔す必要があります。しかしながら、その中で最も胡散臭いのは葬儀屋、また偉そうな事は言うけど腹の中は儲け主義の寺も同じ――、だから好きになれないんだと思う。

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