末期癌で自分の葬式予約したお母さん

もう何人いたでしょうか、事前相談に来た時は元気そうに話しているから親兄弟の事かと思って聞くと、自分が癌の末期だと聞かされるが、全員が『本当ですか?』と言いたくなるほど元気なのに長くて2年、早ければ3か月後には逝去の一報が入る。姉の時もそうでしたが、死亡率1位が癌は納得です。何人もいた中で記憶に強く残っているのは隣接市から来た当時50代の女性でしょうか、

長くは無いと思う――、穏やかに話す姿は落ち着いており、誰のことだろうと問うと、
「あ、そうですよね。私自身のことです」
と言われ、あまりに予想外で驚きました。末期の胃癌は姉と同じですから、こう言いました。
「分りました。よく足を運んでくれました。僕も本音で話しますから、今ご自身の中で気になること、心配なことがあったら全て話してください」

女性の気になることは、3人の息子達に迷惑を掛けたくないし、今はまだ話してないと言います。母親と兄もいるそうですが、何も話してないし話す気も無さそうです。希望は『ぱっく60』火葬して遺骨は全て散骨して欲しいとのことでした。

『強い人だなぁ、もし自分だったら、これほど冷静でいられるだろうか・・・』本音を聞かせてくれたのですから、僕も本音で言います

「とにかく毎月の達成目標を1年分作ってください」
「毎月の目標を1年間ですか?」
「そうです。まずは1年間の目標が達成するまで絶対に死なないと自分で思える目標です。1年が過ぎたら次の1年の目標を書き出し、いつでも見られる場所に貼ってください」
「ところで、子供さんにはいつか伝えるのですか?」
「はい、そのつもりではいるのですが・・・」
「分りました。総額10万円+税だけ用意できたら、その後は死後の心配は一切しなくて良いです。僕らが責任を持って遺骨の処理までしますし、遺骨は『全散骨』『一部手元供養』『一部永代供養墓納骨』と選択できますが、それは息子さん達に決めて貰って良いですよね?」
「あ、はい・・・そうですね」
「この近くに知り合いの喫茶店があって、そこでコーヒー飲みながらまったりが好きなんです。今日相談に伺って、これで死後の心配を一切せずに済みます。来て良かったです」

それから我々も忘れかけてた2年後、息子さんから逝去の一報が入りました。指定された病院に迎えに行くと痩せてはいましたが穏やかな顔をしてました。あんしん館に搬送すると納棺して、息子さん達で末期の水をとり、線香を供えると最終の打合せに入ります。

最後まで言葉で伝えられなかったようで、書面で、前橋あんしんサポート葬儀支援センターに依頼してあるから、封筒の108,000円を持って行けば、全てお願いしてあると書いてありました。子供達に流れを説明し、遺骨はどうするか三択内容を伝えると、一部永代供養墓が良いと言うので、その点もお母さんと打合せしてあり、子供達に任せる事になってたと伝えます。

ところが、死を知った故人の母親とお兄さんから、普通の葬式をしろと言われ迷ったようで連絡をくれ、アドバイスを求められましたが、僕はこんな風に言いました。

「ちょうど2年前、お母さんが自分で相談に来られた時、息子達に迷惑を掛けたくない事と、母親と兄に相談する気はない意思はハッキリしてましたから、絶対に約束は守ると、お母さんに伝えましたので、うちは「ぱっく60」以外は受けません。もし違う葬式をしたいなら、お母さんとの約束は守れませんので、他所に依頼してください」

その後3兄弟で話し合ったのでしょう。「母との約束通りでお願いします」と電話が掛かってきました。火葬当日、母親と兄から、
「火葬だけなんてあり得ない、普通の葬式をすべきですよね」
と言われましたが、
「我々は2年前、約束は絶対に守ると故人に伝えました。その約束を実行するだけです」
葬儀屋らしからぬ言葉に驚いたようですが、約束を果たすことができました。

故人の兄弟姉妹で、時々口を出す人がいますが、支払いする人、家族以外がどう考えようと関係ないんです。我々は故人と約束し、約束を守ってくれると信じて生きた2年間なのです。どうしても違う葬式がしたいなら死後でなく、存命中に話し合っておけば良かったんです。それが出来なかったか、故人がしなかったとすれば、故人は相談する気が無かったか、自分達が無関心だったからです。まともな神経を持っているなら、逝去してから家族に余計な事を言うべきではない。心配するなら葬式でなく、後に残った家族の生活を助けてあげて欲しい。いまさら・・・なんです。

葬儀屋は知りませんが、うちは故人との約束は絶対に守るし守れないなら引き受けません。それが故人へのせめてのも、お詫びと約束が守れなかった懺悔の姿勢です。

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