第七話 5万円火葬実現で最大の難関は霊柩車の取得でした

ある程度の葬式施行数を経験し、自宅での家族葬は納棺師も含め、自分達だけで出来る所まできましたが、最後の難関は霊柩車の取得でした。施行依頼してた葬儀屋さんに聞くと、新車価格の3倍くらいが霊柩車価格という。300万円の車なら900万円!? 普通車改造は安くても700万円~800万円、到底手の届く金額ではありません。ただネットの中に中古の霊柩車も掲載はあるのですが、金額が明記されてるものはなく、全て『お問い合わせください』なので安くはないだろうと諦めていました。一度だけ超特価と書いてあったので問い合わせると250万円――、今の我々ではどうにもなりません。

ネットで様々な知識を吸収しながら、中古車情報も見ますが、
「中古って何処かの葬儀屋が使ってた車だよね、中古って何となく嫌じゃない?」
「でも、一度使ったら中古だから同じじゃないですか?」
千明に言われた言葉は目からウロコでした。そこから迷うことなく中古車を探しますが、当時は中古霊柩車情報は余りなく、簡単には見つかりません。

探し始めて数か月経った頃、何気なくヤフーを見ると官庁オークションというのが始まったようで見ていると、霊柩車の出品があるじゃないですか――、詳細を見ると関西の市からの出品で2台も出てました。その1台には病院内、施設内の死体搬送で使用するストレッチャーも付属してます。よく見るとオークションでなく、入札方式で最低価格以上で買いたい価格を設定して入札し、締め切ったあとで一番高い人に買う権利が与えられるものです。中古相場を調べ35万円で入札しましたが、〆切直後に届いたメールには「あなたより高額入札をした方がいます」と落選でした。それでも中古の霊柩車は存在すると分ったのは大きな進歩です。

翌月の官庁オークションに期待しましたが霊柩車の出品はありません。更にヤフオクを見てると、
「あー、霊柩車が出てるぞ! まだ15万円だぞ」千明を呼び詳細を確認します。開始価格は5万円、現在価格15万円のクラウンベースの綺麗な外装で搬送専門業者が使用、走行距離は17万kmを超えています。まだ走るのか心配で、いつもお世話になってる整備士さんに確認すると、
「平成9年クラウンなら、エンジンが良いので整備してれば30万kmは走るんじゃないかな」
「って事は、あと13万kmくらいは走るって事ですか?」
「はい、ちゃんと整備したり、オイル交換してれば大丈夫でしょ」
プロの太鼓判を押され、一気に買う気満々です。ただ霊柩車だけでは仕事になりませんから、ストレッチャーの出品が無いか確認、出てますが即決20万円、輸送量が別途8,000円掛るようです。

狙いは決まりましたが、オークション初心者で勝手が分りませんから締め切り期限までの数日間は同行を見守りますが、落札価格は変化せず締め切り当日を迎えました。締切り朝7時30分、30分前に事務所集合、入札ページと時間ページを開き、昨夜考えたオークション必勝法を語ります。
「1分前まで静かに待機・価格確認して・2万円上乗せすれば買えるだろ」
「うん、きっと買えますよ」
ワクワク、ドキドキしながら1分前まで待ち更新ボタンを押す――、
「あれー??、残り9分に増えてるぞ何でだ??」
残り時間に余裕があるので、オークションの説明を改めて読むと、残り5分を切ってからの入札は自動で5分延長と書いてある。ってことは、最低5分間は最高値を維持しなければ買えません。
昨夜の必勝法が全く役に立たないと分った瞬間でした・・・(-_-;)

価格は20万代後半になってるようで、最高入札者の表示が出るまでクリックを続けると、出ました「あなたが最高入札者です」の文字を見て興奮、まだ買えた訳でもないのに、
「おーっ、最高入札者だぞ」
価格はそのまま上がり続け、38万円代の攻防に入ったところで少し冷静になります。今のままで行くと40万円を超えそうだけど、金も無いのに買うべきなのか、それとも次回の霊柩車出品に期待すべきなのかと自問自答しますが、その間にも価格は上がりたった今、残り6分に増えたばかりなのに千明が慌てた声で言います。
「あ、もう終了時間だ。終わっちゃいました。買えなかったんですか!」
矢継ぎ早の声に『何言ってるんだこいつ・・・?』と思って画面を見ると、いつの間にかタイマー画面が2つ開かれ、千明が見ていたほうは終了の文字が出ています。
「あー、まだ終わって無いから心配ないよ、ほら」
と残り6分のタイマー画面を指さすとホッとしたようですが、そこで聞きます。
「このままだと40万円は超えるだろうけど、どうする? それでも買うか?」
「予想より高いけど、他はもっと高いですよね。ならこれを買ったほうが良い気がします」

千明も僕と同じように考えているのが分ったので、
「おしゃっ、ならこれ買うぞ」
そこから最後の攻防に入り、40万円を超えた途端入札者がいなくなります。現在価格403,000円最高入札者は僕です。残り5分、4分、3分、2分、1分、ドキドキしながら待つ時間は長い・・残り30秒、10秒、そしてついに「終了」の文字『買えたのか?』すぐにメール受信をクリックすると『おめでとうございます。あなたが落札しました』の文字にガッツポーズです。最終価格は403,000円+リサイクル料10,010円+陸送費20,000円=433,010円、ようやく待望の霊柩車が手に入った瞬間でした。

すぐ以前確認したストレッチャーのページに移動すると、まだ落札されていません。出品者の方に『運賃含めて20万円では駄目ですか?』とメールで打診すると、
『お隣の県ですから良いですよ』との返信で搬送に必要な物が買い揃った。支払いは本日中に済ませますと両者に連絡、振込先を確認すると銀行に走ります。まず44万円引き出して霊柩車の振込を済ませると、次に20万円引き出そうとしますが出来ません。
「ん? 間違えたか、やり直すわ」
しかし引き出し出来ません。なんだ壊れたのか? あ、思い出しました。ATMの引き出しは1日50万円が限度額、引き出せるはずがありません。一度戻って引き出し出来ない説明と明日入金する旨をメールで伝え翌日午前中に入金、あとは到着を待つだけとなりましたが、霊柩車さえ買えば、すぐに搬送できると思ってたのは大きな間違いと教えられるのです。 つづく

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